そんな中 Apple Pay の Suica が消えてしまうという事件が起きた。事の発端は全く関係ないところからやってきた。(同じ現象で困ってて手っ取り早く解決策を知りたい方は一番下をご覧ください!)
筆者は iCloud のメールアカウントと、購入用の AppleID 用のメールアカウントを別々に運用している。なんでそんな面倒なことをやってるかというと、昔はこれらは別なメールアカウントを設定するようになっていたからに他ならない。iCloud も me.com というサービスだったから未だにメールアカウントも me.com のままだ。
始まりはある時届いた1通の怪しげなメール。購入用 AppleID がハッキングされたと考えた筆者は、パスワードを再設定し2ファクター認証設定しておくことにした。iPhoneからパスワードを変えようと思ったら、AppleID管理サイトに行けという指示があったのでSafariで訪れてログインを試みた。するとセキュリティの質問というのが出てきたので、それに答えてログインしようとするとグルグルとお待ちください表示のまま進まない。あれあれ?と思って再度Safariを閉じて、もう一回試すと、今度はログインIDを入れ、パスワードを入れると、再びセキュリティの質問が表示され、一瞬AppleID管理画面が出たと思ったら、「前回のセッションが終わってないからログアウトしてください」というカウントダウン付きのダイアログが表示されて何もできない。仕方ないのでログアウトを押して、再びログインを・・・というのを何回か繰り返して、こりゃ無理だと諦めて、WindowsPCからChrome、IEでそれぞれ試し、Macに戻ってFireFox、Chrome、Safariで試したがダメなので、Appleサポートに連絡することにした。こっちはパスワードを一刻も早く変更して2ファクター認証を設定したいだけなのだ。
やっと繋がったさわやかボイスの担当者に事情を説明するとIMEIを教えろとか色々言われたけど我慢してつきあって、既にやってダメだったあれこれを再度試されて、何度も3〜5分お待ちいただけますかと待たされた。私はiPhoneで電話をしながらMacを操作して言われるがままに操作を試したがどれもダメ。さすがに30分くらいたってこちらもイライラし始めたとき、相手はこんな事を言い始めた。
Appleサポート「それでは今お使いの AppleIDをiCloudに設定してみていただけますか?」というのだ。
私「でも、今って別なメールアカウント設定されてますよ?」という問いに対して
Appleサポート「はい、一度サインアウトして、iCloudにAppleIDを設定してみていただけないでしょうか?」
ふむ、これは新しい今までに試したことの無い提案だ。興味深いと思ってイライラも忘れて、
私「それやると何が変わるんですか?」と聞いてしまった。まさに「好奇心は猫を殺す」だ。
Appleサポート「はい、iCloudの画面からでしたらパスワードの変更も2ファクタ認証の設定もできますので、それをお試しいただきたいなと思います」妙に自信たっぷりだった。
私「へー、それは便利だな」と応じながら、Macの設定画面を開いてiCloud設定画面を見て、ふと頭に危険信号が点滅した。
私「ちょっと待って、Macだと今書類フォルダーとかあれこれが全部iCloudに同期されてるんだけど消えちゃったり、すごい時間かかったりしますよね?」
Appleサポート「なるほどっ。」
私「(。。。)だからここに設定はできないですよ」
Appleサポート「それではiPhoneなど他のデバイスはいかがでしょうか」どうしてもこの手法を試してみたいらしい担当者は食い下がる。
私「今、電話してるiPhoneでやった方がいいですか?」
Appleサポート「お願いできますか?」
これが正にやっちゃいけないミスの引き金を引くことだった。言われるがままにiPhoneのiCloudをオフにして(これも手間のかかる作業だ)、オフにするのもえらい時間がかかり、終わったらそこに購入用 AppleID を設定する、「設定中」のまま延々と待たされた後、無事にiCloud に購入用AppleIDが設定された。(ややこしい)
iPhoneの設定の中のiCloudの設定画面からは確かに「パスワードとセキュリティ」という項目が見つかった。パスワードの変更をタップしてパスワードは無事変更ができ、2ファクター認証もONにすることができた。「プロセスはどうあれゴールには到達できた」の図だ。無事ここまでこれたのでiCloudを元のメールアカウントに戻して、お礼を言って電話を切った。
その翌日。
ApplePay に登録していたクレジットカードからSuicaから全部消えていた。実際にはiCloud をオフにした時点で消えたと思われるのだが、とにかく青くなって再びAppleサポートに電話して、Appleサポートの担当者にiCloudオフにしろと言われてやったらウォレットの中身が消えたということを説明した。「お手数ですがもう一度登録いただくことはできないですよね?」とAppleサポートの人に聞かれたので「いやいやクレジットカードはそれでいいかもしれないけど、Suica はApplePay に登録したら使えなくなっちゃいますから捨ててしまいましたよ。」と説明してあげると、しどろもどろになった相手は、そのまま少しお待ちいただけすかと10分以上待たされた。そして色々質問攻めにあい、昨日の問合せ番号を教えたり、あれやってみとか紆余曲折すること数十分、スペシャリストに繋ぐから待っていただけますか?と言って待たされた。既にここままで30分以上かかってるのに、何も解決していないし、理由はなんなのかも教えてくれないし、何がどうなったのかの説明も無い。聞かれたのは「いくら入ってましたか?」「Suicaはもう無いんですよね?」とかそんなこと。繋がったスペシャリストに再び説明を開始。電話口に出てきたスペシャリストという女性が、私のiCloudのアカウントを教えてと言うので教える。これを教えるためにも、いちいちAppleID管理画面にログインしてチケットを払い出して本人確認する、という面倒な手間が必要になる。で、本人確認が終わってまた暫く待たされて「そうですね、こちらのIDには何も登録されていませんね」という返事が返ってきた。今回、意表を突かれたのはこっちだ。「いや、消えてるから電話してるわけでしょう。そのIDにちゃんと存在してれば今電話したりしないんですよ」と応える私に、「もしかするとAppleIDの方にあるかもしれませんから、そちらのIDも教えていただけますか」という回答が返ってきた。「ウォレットの内容はiCloudに保存されるんじゃないですか?」との問いを無視して「念のため」を繰り返すスペシャリストのために、再びAppleID管理画面にログインしてチケットを払い出すという手順を踏んで本人確認をして、さらに待たされて「そうですね、こちらのIDにも何も登録されていませんね」という予想通りの答えを私は地蔵のような表情で聞いていた。
さて、そうなるとどうなるのか。何回も何回も元々の Appleサポートの人にも、今回のスペシャリストにも「Suicaは持ってないんですよね」ということを聞かれて絶望しかけていたら、また暫く待ってくださいねと言われて10数分も待たされた。
スペシャリストの女性が戻ってくると、「ちょっとお客様の端末の中身を見させてもらって良いですか?」という"ちょっと"驚くことを聞かれて、へ〜Appleの人はデバイスの中身を見れるのかと思いつつ、嫌も応も無いので言われたとおり Wi-Fiに接続して、「今からリモートで画面を見るための招待状をデバイスに送りますので承諾をしていただいてもよろしいですか?」と言われた。ほどなくしてリモートアクセス許可が表示されて、規約を読んで同意して承諾をすると画面に矢印ポインターが表示された。その矢印がグルグル動いて「見えますか、これが私が操作しているポインタです。今お客様の画面が見えておりますが操作はできませんので、矢印の部分を指示に従って操作していただけますか?」とスペシャリストから説明を受けた。へ〜へ〜へ〜!自分のグチャグチャなホーム画面を見られてるかと思うと何か変な気分だが、そこから設定アイコンを示されて、開いてもらえますか?言語を選んで、はい、言語は日本語になってますね。ふむふむ。それでは次に・・・という具合に次々と矢印を示されて、最後にウォレットの中身を見せてもらえますか?という話しになった。既に時間は1時間以上経過している。「何も登録されていませんね」という想定内の返答に、なんて返事しようか考えていると「この右上の (+) を押してもらえますか?」と言われて押す。「Suicaを選んで」。。。すると元々あったSuicaらしき情報と「再度登録する」という選択肢が表れたのだ。ブラボー!クレジットカードも2つあったうちの1つは出てきたが、2つめは出てこなかったのでこれは自分で登録し直した。これで無事にウォレットの中身は戻った。最早、誘拐犯と人質の間に生じるストックホルム症候群みたいな脳みそになっている私は、ありがとうありがとうありがとうと何度も言って電話を切った。
その翌日。
Apple Watch で解除出来ていた MacBook のログインが解除できなくなっていた。昨日までの話しと繋がってるとは思いもしなかったので、暫く色々試して、Mac の設定画面の「セキュリティとプライバシー」の Apple Watch でこのコンピュータのロックを解除する」チェックボックスがオフになっていることを発見した。チェックボックスをONにしようとすると、「Apple Watch でMacのロックを解除できるようにするには Apple Watch はiCloudにサインインしていなければなりません。iPhone の Apple watch App を使用してサインインできます。」というメッセージが出た。
あぁ、そうか。iPhone とペアリングしているのが Apple Watch で、iPhone に設定している iCloud と、Apple Watch にサインインしている AppleID はこれまた別なところから設定しないとならないのかと理解するのに数分を要した。そして iPhone の iCloud を消したから、Apple Watch の AppleID も消え、Apple Watch の AppleID が消えたから Mac の「Apple Watch でロック解除のチェック」も消えたというわけなのだ。Mac に iCloud を設定すれば「Macを探す」機能が使えるし、iPhone に iCloud を設定すれば「iPhone を探す」機能が使えるのと同じように、Apple Watch 本体にも iCloud を設定しなければならないが直接設定できないから、iPhone の Apple Watch App に設定するという一見2度手間とも思えることをやらないとならないというわけだ。
言われる通り、Apple Watch App の設定>一般>Apple ID で iPhoneのiCloudアカウントが表示されるのでそれでサインインした。これで無事 Mac のロック解除もできるだろうと思いきや出来ない。何ができないかと言うと、Mac 側のロック解除するチェックボックスがONにできない。相変わらず Apple Watch App でサインインしてねと言われる。これは手詰まりだ。
Apple Watch を再起動してみたがダメ。Mac のiCloudはサインアウトするのは度胸がいるので最後の最後の手段としてやらないでおいて、次にできるのは Apple Watch の再ペアリングだ。これもとんでもなく時間がかかるのであまりやりたくなかったが試すことにした。これでダメなら Mac のiCloudサインアウトだろう。
結果として Apple Watch の再ペアリングをしたら、MacのチェックボックスもONにできるようになった。
今回痛感したのは、最早iPhoneのiCloudアカウントはそう易々とサインアウトしていいものじゃなくなってるということだ。今は HomeKit 対応の家電とか使ってないけど、もし使っていたらとんでもないことになっていたかもしれない。CarPlay なんかも同様だ。AppleTV も大丈夫なんだろうか。今回「安易にiCloudサインアウトしてみてくれますか」とそのリスクや想定されるインシデントを一切説明しなかった Appleサポートスタッフの人には文句を言いたいが、色々気付きがあったという点で感謝もしたい。
(1)ApplePay からSuicaが消えたらどうする?
- iPhone の iCloud をサインアウトすると ApplePay は消え、サインインし直しても復元されない。
- Phone の ApplePay App の(+)からSuicaの登録を選択して旧いSuicaを再登録すれば良い。
(2)Apple Watch でMacのロックが解除できなくなったら?
- Phone の Apple Watch App で再度 AppleID にサインインする。
- それでダメなら Apple Watch を再ペアリングしてみる。これで解決しなかったら手のうちようがない気がする。
(3)iPhoneのiCloudサインアウトするリスクは?
- ApplePay の内容が一旦全部消えてサインインし直しても復元されない
- メモ、ブックマーク、連絡帳、カレンダーなどなどiCloudに保存されてるデータも一旦全て消える。(暫くすれば戻る)
- Apple Watch の AppleID が自動的にサインアウトされる。
- その結果 Mac の Apple Watch でのロック解除ができなくなる。
いやいや、勉強になりました。皆さんもどうぞお気をつけて。