iPad Pro 12.9" は企業のITを根底から変えてしまう可能性がある
”変革”が起きるときにはネガティブな意見が噴出する
Apple 製品って後者みたいな製品が多い。iPod が出たときに、ウォークマンを使っていた人は多く、MD に自分の好みのコンピレーションを作って持ち歩いていた人や、お気に入りの CD を持ち歩いていた人たちは、最初ポカーンとした筈なのだ。「何千枚もある自分の CD を全部持ち歩けるだって?そんなに聞けないし!」ところが実際には、大抵のユーザーはコンピレーションとして好きな音楽を入れたときには別な音楽が聴きたくなるというジレンマがあったことを Apple は知っていた。だから「あーあの曲聴きたいな、うわっ今日は持ってないや!」ということが起きなくなったことで、自宅と同じ音楽体験が場所を選ばずにできるようになり、我々のライフスタイルはそれによって大きなパラダイムシフトを迎えたのだ。
iPhone は携帯電話というものを根底から変えてしまったが、最初は「音楽聴いてる時には電話なんて気づきたくない!」だとか「何に使うのそんなデカいの」とか、まーネガティブな意見が本当に多かった。だが今はどうだ?
iPad も似たような反応だった。スマフォで十分、とかPCにはなり得ないとかそういう反応は耳にタコができるほど聞かされた。しかし最も自然に受け入れたのは子供と主婦という IT リテラシーとはほど遠い人たちだった。常に動き回って忙しい家庭の主婦(特に私の妻は!)は、人生で最も素早くその IT 製品の恩恵に気づいた一人だろう。常に家の中で iPad mini を携行し、キッチンではレシピを見て、LINE での友人との会話は声による音声入力だし、メモは全部テキストではなく思いついたこと、やるべきTODO、買わないといけないもののリスト、あらゆることをボイスメモで録音していた。銀行、クレジットカード、UNIQLOのオンラインストアの買い物や、その他オンラインストアもいつしかPCではなく iPad になって、家計簿から、音楽を聴くミュージックプレーヤーも全てが iPad で行われていた。遙かに私よりも iPad を使いこなしているのを見てとても関心したものだった。
iPad Pro が企業に浸透するかを予測してみる
あの天下のIBMが社員のPCを Mac か Windows か選べるようにした。40代以上の人は Windows が好きだが、これらかの時代を担う人たちは Mac を選択するケースが多かったようだ。瞬く間に 3万台の Mac が社員に配布されたが、ヘルプデスクへの問い合わせ率は Windows PC ユーザーが 40% に対して、Mac ユーザーは 5% と大変なコスト削減にもつながったという話し。参照:「IBM がいかに Mac を6ヶ月で3万台配布できたのか?」
iPad Pro をスマフォの延長や、iPad の大きなタブレットと思って持つとてつもない違和感がある。「お盆!」とか「デカすぎて使いづらい」とか「重い」とかあんまり良い意見は聞かない。前掲した写真を見ても判る通り MacBook Air 13” と変わらない大きさだ。しかし、このネガティブな意見は今までの PC やスマフォや iPad を知っている私たちが感じる違和感でしかない。
これからのユーザーはこの iPad Pro と専用キーボードと Pecil で PC不要の体験が出来るようになり、クラウドのシステムでほとんどニーズが賄え、薄く、軽くて、大画面の iPad Pro を大歓迎するだろう。企業においてどれだけのユーザーが自分のPCにソフトをインストール必要があるだろうか?
もう1つ大きなメリットは、ウィルスソフトが不要な iPad Pro は、iPhone、iPad、Mac の延長でデバイス管理が行えるため IT 統制を計るのがとても簡単で、その結果運用コスト、サポートコストも削減でき、会社としてもリスク軽減とコスト削減という恩恵を享受できるだろう。よく Surface と比較される記事などを目にするが、Surface はどこまで行っても Windows PC のままなので比較対象にすらならない。以前も書いたが Microsoft がタブレット市場に進出したときに力を入れるべきだったのは(もはや無かったことになってる感あるが) Windows RT だったのだ。
と、ここまで書きながら思うのは、その威力を最大限に発揮するためのスマートキーボードと Pencil が4~5週間待ちという状況について、少し残念な思いを抱きながら iPad Pro はまだ箱の中で眠っているのである。。。