iOS 13 リリースと Apple のサービス戦略について
Apple のサービス戦略に見る「器」の大きさ
音楽サービスでは、Spotfity を先頭に Google Play Music , Amazon Prime Music , Deezer なんかがあって価格はどこも同じです。先日発表された Apple TV+ は完全オリジナルコンテンツだけで勝負しようってことらしいですが、Netflix , Hulu , Amazon Prime Video と比べると コンテンツの数も魅力も劣っています。(だから暫くは無料)
昔は「母艦」と言われたPCが必須だった iPod から iPhone になっても暫くその姿は変わらず、そして最近の iPhone ユーザはむしろ「は?母艦ですか?」とポカンとされることの方が多くなってきています。iPhone で聞きたい音楽はCDからPCの iTunes に入れられ、それを iPod に同期して音楽を聴くスタイルが標準でした。しかしiPhoneが発売されてから2年後には Apple は iTunes のロゴから CD を消してしまいました。携帯電話はいつか壊れたり水没したり機種変更するときが来ると、いつデータが消えてしまうかわからなかったため、撮影した写真は iPhoneからPCに取り込むのが普通でした。その当たり前だったことが、数年で大きく変わりました。
iPhone を買った人はみんな Apple ID を作ります。Apple ID は元々はコンテンツを購入するために作っていた ID で、 yahoo や google など好きなメールアドレスが使えましたが、今では iCloud とほぼ同一に見えるように変更されています。iPhoneを買えば iCloud のアカウントを作り、そのメールアドレスが自動的に Apple ID になるという仕組みに変わったのです。iCloud はメールとして使え、カレンダー、TODOリスト、メモ、ボイスメモ、チェックしている株価、Webブラウザのブックマーク、CDから取り込んだ音楽、撮影した写真、購入したアプリとデータ、Webサイトで利用するID やパスワードの認証情報とクレジットカード情報、お使いのiPhoneのバックアップデータまでをも、全て iCloud に保存できるようになりました。iCloud に保存されているデータは暗号化されて保存される仕組み(メール以外)のため、Apple 社の人が盗み見ることはできません。故に、保存されたデータをターゲティング広告に使ったりも出来ません。
2013年にコンピュータ科学者のジェニファー・ゴルベックが TED で語った「カーリーフライにいいねをすると貴方の秘密は全て晒されることになる」という衝撃的な話しをしたのを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。無料の Facebook や Instagram などで無意識にカーリーフライの写真に「いいね」をすると、貴方の年齢、家族構成、年収、どのような交友関係を持っているか、どんな政治的な思想があるか等など全て吸い取られているという話しでした。Google などの巨大ネット企業の多くは、こうして利用者のプライバシー代わりに便利だったり、自己承認欲求を満足させることができるようなサービスを無料で提供できるのです。Apple は GAFA の中で唯一プライバシーを大切にすることを訴え続け、「プライバシー」という言葉でユーザにセキュリティの知識をジワジワと浸透させて他の巨大ネット企業に戦いを挑んでいるように見えます。つまり「無料でこのサービス便利だなぁ」v.s.「貴方のプライバシーダダ漏れで本当に良いの?」なのです。
「カーリー・フライの謎解き — ソーシャルメディアでの「いいね!」があなたの秘密を明かす?」
Apple はプライバシーを護りたいならお金を払うべきと言っている
気がつけば、これを書いてる自分も3万曲の音楽が iTunes に入っているのを iCloud 経由で聞くために費用を払っています。12万枚の写真が圧縮もされない状態で iCloud に入っています。会社と持ち歩いている MacBook もドキュメントは全て iCloud で同期されています。この時点で自分が Apple に支払っているサブスクリプション費用は、
- iTunes Music Match 3980円/年 ・・・iTunes に入っている楽曲を iCloud でマッチングしてクラウド経由でストリーミングするサービス。これが無いと必要に応じてiPhoneの中の音楽を入れ替える必要があります。
- iCloud ドライブ 15,600円/年 ・・・Mac のデータ保存、iPhone や iPad 等デバイスのバックアップ、写真、書類、iCloud 関連データ、あらゆるものが保存されています。
- Apple Music 17,400円/年 ・・・Apple は Android でも Apple Music アプリをリリースし、Android ユーザでも自分のライブラリをクラウド経由でストリーミングして聴けるようにしてくれました。そのためには Apple Music に加入する必要があります。Apple Music には聴き放題の 5,000万曲の楽曲が用意されており、気に入った音楽は自分のプレイリストの中にどんどんダウンロードしてオフラインでも楽しむことができます。よって、最早3万曲の自分の楽曲を聴いているのか、Apple Music からダウンロードして聴いているのかの境目はありません。Apple Music をこのように利用すると、家族のデバイスでそれを聴こうとするならファミリープランへアップグレードが必要になります。